漂流座敷:大運動会 閑話『 の』お弁当(上)
「さーて次の種目は・・・」
競技の説明をしようとしたさらに透が悲壮な顔で話しかける
「あの、そろそろお昼御飯にしませんか?」
さらは透の顔を見た後目線を時子や紫蘇に向け何か合図をだした
そしてにこやかに
「そうですね、もうそんな時間ですか」
ガタガタ
ゴトゴトゴト
カタン
カッシャン
時子と紫蘇が台車でコンロ台や座卓を家の中から運び出している
申し訳なさそうな顔をした秋乃がザルとバケツを透に差し出し
「えと…あの。」
透は何かに気付き半分諦めた顔で深くため息をついた
「あー…何をどこから持って来れば良いんですか?時子さん」
時子はニッと笑って
「あっはー勘がいいねー、透くん」
「何と云うか…いつもの事ですからね」
「うんうん、じゃ行ってらっしゃい。帰って来るまでには用意しとくから。」
やれやれと云う表情で歩き始める・・・・・
・・・・?
・・
透はクルリと歩く向きを変える
「何だろ?忘れ物かな、秋乃ちゃん渡したよね」
秋乃は皿を持ったまま首をかしげる
カシャンカシャンカシャン
皿が首をかしげたのと同じ方向に崩れ落ちる
「あ・・・」
「あ・・じゃなくて。紫蘇?この子、天然?」
「む・・・すまない」
割れた皿をしゃがんで拾う時子に影が落ちる
「ん?」
影を見上げる時子
「どうしたの?透くん、忘れ物?」
「時子さん、俺はどこへ何を取りに行ったらいいんですか?」
・・・・・・
「あ、云うの忘れてた。」
「お前の方が天然だ」
・・・・・・・・
・・・・
「えーと以前水を汲みに行った川でトマトとキュウリ、もやし?冷蔵庫代わりかよ
これをバケツに汲んだ水に漬けたまま持ってくのか?ザルは何に使うんだ?」
透はザルをブラブラさせながら帰り道を急いだ
「透くん〜おっかえりー・・・ってあれ?トマトとかキュウリは?」
「あ・・・この中に・・・」
「あんたも天然だね」
「何の事ですか?」
「いやいやこっちの話。さてーごはんだー」
「ごはん・・・お米のごはん・・・」
「さらさん壊れかけ?」
さらは、いつもより光って見えるシャリを眺めてうっとりしている
「あきたこまち・・・・」
「ん?・・・誰か・・・?」
「どうしたの?透くん?家の方見て?」
「あ、時子さん。家の中に誰か居たような気がして・・・」
「何云ってるの?みんなここに居るじゃないの」
「ですよねぇ」
「ここは開けっ放してても泥棒なんて入らないわよー。」
「はぁ・・・そうですよね」
「お昼ごはんだよー、さぁ食べよう〜」
「なんと云うか・・・運動会には弁当だと思っていたがこういうのもなかなかいいものだな」
家の中に有った座卓などが外に運び出されていた
桂はその座卓のいつもの場所に座り呟いた
「何か妙な感じだよね、外で炬燵に入るのって」
人数が多い為、炬燵まで外に出されていた
「青天井に畳で炬燵か、ここでしか出来ないなぁ・・・」
「曇り空だよ、透くん?」
「良いんですよ時子さん。そんな細かい突っ込みは」
「かっちゃーんたまごやきあんずがつくったのー」
あんずは桂にまわりは焦げ焦げ中は半熟の卵焼きを差し出した
砂糖が多めに入っているため焦げやすいのに早く作ろうと強火で焼いた様だ
「透さん、これは私が作ったのですよ」
とさらが籠に入れたパンと皿に盛り付けた野菜炒めを持って来た
やはりと云うかパンは動いていた
「中に何か入っているんでしょうか?」
秋乃は恐る恐るパンを箸でつついてみた
パシン
箸がパンに弾かれた
「何だ?このパンは?」
紫蘇は眉を寄せた
「まー…さらさんが作ったものですから、これは観賞用って事で」
・・・・・・・
じっと人間たちの動きを見ていたパンはふんぞり返って籠から落ちた
籠に戻ろうと籠に手(?)を伸ばす
逆に籠に捕まれた
籠は逃げ出そうとするパンを捕まえる
何とか隙を見付け伸びるパン
それを押さえ込もうと籠をほどき追いかける
パンの先を行きしっかりと捕まえた
・・・・
「さらさん?籠もさらさん作ですか?」
「あら、透さんよく分かりましたね」
やっぱりか。
「あっはー透君は、さら鑑定士かなー?」
籠に掴まれたパンを箸で移動させながら時子は透をからかった
・・・・・
パンはぐったりとした
籠は一度キュッとパンを締め付けたが動かない事を確認すると
籠の形体に戻ろうとパンを放した
・・途端パンはグァっと広がった
広がり籠を掴んでしまった
籠は慌てて手を…いや籠を伸ばそうとした
がそれに巻きついてパンがしっかり巻き付いてしまう
ぐぐぐっと引き戻す
ペキッ
メキキッ
パンは無理矢理パンとしての元の大きさに戻ろうと縮まる
パンは籠より少し大きめに広がったまま
暫く考えた風にそのままの大きさで止まる
ベギギッ…ミシッミシッミシッ
ギシシ・・・・
再び縮まりだした、パン中に入った籠ごと
籠は暴れた・・・暴れる
パンはその度に部分的に伸びる
しかしその勢いは徐々に小さくなっていき
籠は・・・大人しくなった
だがパンは元の大きさまで縮もうとしている
抵抗は無い籠、
沈黙
元の大きさにまであと少しと云う所で
パンは一息をついた
動きが止まる。そして考える
考えて、考えて、考えて…気付く
そうだ…籠が中に在ったらこれより小さくはなれないじゃないか
パンはそう考えて籠を放す
バラバラになった籠
折れ、砕かれ、潰された…元籠だった物
細かく削がれた破片まで吐き出すと満足いったかのように
パンは元籠だった物の上にどっしりと腰を下ろした
腰なんてものが有るのかは知らないけど
「だーもう、鬱っとおしい」
時子はパンにお湯をかけた
パンは何をするんだとばかりに時子の方へ体の向きを変えた
が
べしゃっと
潰れてしまった
水分を吸ったパン
腕を伸ばそうとするが
伸ばす端から千切れ、溶けて行く
元籠であった物体の上の元パンで在った物体
「捨てようか・・・」
時子は屑入れを手元に寄せる
「なるべくさらさんに見せないようにそっと・・・ね」
透はさらに見えないように体で屑入れを隠す
顔より大きいおにぎりを手に取った透
「これ誰が作ったんですか?」
「手に取ったのだから全部食べろよ」
紫蘇が顔を赤くしながら云った
「へー紫蘇さんが作ったんですか、中は何かな?」
透はおにぎりを割ってみる・・・が、ご飯だけ
割った場所が悪かったのかな?と別の場所を
割ってみる
「?」
「何を遊んでいるんだ、さっさと食べろ。・・・?
何か入っていたか?」
紫蘇は少し不安げに透に聞いた
「あ、いえ何も・・・と云うか具は?」
「具?」
「具です、おにぎりの」
紫蘇は不思議そうに透を眺め首を傾げた
「具?・・・おかずは目の前に有るだろう?」
透は紫蘇を見つめる
「な・・・何?」
紫蘇は耳まで赤くした
その様子を横で見ていた時子がからかう
「えー?何?紫蘇ってば顔真っ赤〜。どしたの?透君」
「あ、いえ…別に」
「えー、怪しい〜紫蘇と透君が見つめ合って・・・
透君、私とは遊びだったのねー・・・・」
と、だけ言い残し時子は走り去ってしまった
「と・・・時子さん。あ・・ねぇ、紫蘇さ・・・」
透も顔を少し赤くして紫蘇に振り向く・・・
えー・・・・
紫蘇はどこから取り出したのか弓を握っていた
「それで・・・逃げたのか」
長くなりましたのでとりあえずここまで
まだまだ続きますよ。^^